homeホーム

menuメニュー

おくちでたべるドットコム

昭和大学歯科病院 口腔機能リハビリテーション科

local_library第31回 口腔ケアをいつやる?

日本は、超高齢社会に突入し、65歳以上の人口割合は2015年で約25%、2025年には約30%、2060年には約40%に達するとみられています。そのような超高齢社会において、全身管理はもちろんのことですが、お口の中の管理も健康な生活を送る上で重要な事です。口腔ケアとは、むし歯や歯周病予防のためだけではなく、全身の健康を守るためにとても大切です。今回は口腔ケアをおこなうタイミングについて少しお話いたします。

日本人の死因の第3位は肺炎です。肺炎で亡くなる方の多くは誤嚥性肺炎が原因となっています。肺炎で亡くなる65歳以上の高齢者のうち、95%以上が誤嚥性肺炎とされています。この誤嚥性肺炎とは食べ物や唾液、お口の中の細菌が間違って肺に入ってしまうことで起こる肺炎です。

口腔ケアは原則として食後に行うのが基本ですが、食前に口腔ケアを行って、口腔内の細菌数を減らすことで誤嚥性肺炎を予防することができます。口腔ケアは、お口の歯や粘膜、舌などの汚れを取り除くだけでなく、口腔ケアを行う際の歯ブラシやスポンジブラシなどの刺激が口腔機能の維持・回復にも役立ちます。

では、胃瘻などチューブから栄養を注入していて、口から食事をとられていない方に対しては口腔ケアは不要でしょうか?

実は、このような方はお口を使うことが減り、唾液の流出の減少がみられ、お口の中は乾燥しがちになり細菌だらけになっています。この細菌だらけの唾液を誤嚥すれば誤嚥性肺炎になってしまうリスクが高くなります。したがって、お口から食事をとっていない方ではより丁寧な口腔ケアが必要なのです。

その場合口腔ケアはいつ行うのが良いのでしょうか?

チューブからの栄養注入後すぐに口腔ケアを行うと、口腔ケアの刺激が原因で嘔吐や逆流を起こしてしまう可能性があります。それに引き続き、胃内容物を誤嚥してしまうと、重度の誤嚥性肺炎を引き起こす危険性があります。そのため、栄養注入終了後、一定の時間を空けてからか栄養注入前に口腔ケアを行う必要があります。

このように口腔ケアは、その方の症状によっていつ行うのが適切なのか異なるのです。

当科は、摂食嚥下障害、構音障害そして睡眠時無呼吸症候群の治療を専門とする診療科です。摂食嚥下障害のみられる患者様や要支援・介護者様においては、自分自身での口腔ケアが十分にできない方がたくさんいらっしゃいます。このような方々に対し、口腔ケアはもちろんのこと、歯科医師、歯科衛生士、言語聴覚士の3業種で連携し、口腔機能回復(機能的口腔ケア)を専門的に実施しております。普段の歯磨き、発音、口の周りの運動についてお困りの方やご家族様は一度当科にご相談ください。

田下 雄一