① 口腔癌術後
訓練の内容は、初期の段階では発音と嚥下機能の両方の改善を目指し、舌や顎、唇や頬など口腔周辺の器官の運動機能訓練を行います。これは当科で開発した「摂食機能療法」という練習メニューにのっとって計画的に実施します。訓練が進むと単語や本読み、会話などの練習をし、相手に言葉が伝わりやすくするように工夫する練習をします。
また、発音や嚥下障害が重度な場合は歯科医が舌接触補助床(写真2)を作製します。これは上あごの部分を厚い形状にした口蓋床で、手術で移植した舌の動きが悪く、舌と上顎をうまく接触できない患者さんに適用されます。舌接触補助床の装着により、タ行やカ行など、言いにくい音が発音しやすくなったり、嚥下時に食べ物を口のなかでコントロールしやすくなるという利点があります。
写真2:舌接触補助床
② 唇顎口蓋裂、先天性鼻咽腔閉鎖不全症
A.唇顎口蓋裂
お子様の成長にあわせて唇や口蓋の手術が行われますので、その都度言葉の状態をチェックし、その時期に必要な構音訓練、鼻咽腔閉鎖機能訓練を行います。お子さんによっては視覚的なフィードバックができる訓練機器(エレクトロパラトグラフ、「機能性構音障害」参照)を用いる場合もあります。
また、鼻咽腔閉鎖不全(空気や声の鼻漏れ)が問題となる場合は歯科医がバルブ型スピーチエイド(写真3)を作製することがあります。これは尖端にプラスチック製のバルブがついた装置を上顎にはめる形態のもので、これによって発音時に口腔と鼻腔の間にできてしまう隙間を閉じ、鼻漏れを改善します。