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昭和大学歯科病院 口腔機能リハビリテーション科
わが国では、65歳以上の高齢者が総人口を占める割合は26.7%(平成27年総務省統計局)であり、今後は75歳以上の後期高齢者の増加が顕著となることが予想されます。高齢期において身体の機能が低下し、身体的な問題のみならず、精神・心理的および社会的にも支障をきたしやすい状態を「フレイル」といい、健常な状態と要介護状態の中間の状態とされています。
世界で使われている、フレイルの代表的な判定基準としてはJ-CHSという指標があります。この指標に従って
の5つのうち3つ以上に該当すると「フレイル」と判定されます。なかでも、口腔機能の低下や摂取可能な食品の制限など口の機能に関する衰えを「オーラルフレイル」といいます。そこで今回は、オーラルフレイルについてお話ししたいと思います。
オーラルフレイルの初期段階でみられやすいのは、咀嚼機能の衰えです。咀嚼とは食物を噛み、唾液と混ぜ合わせて、飲み込める状態にするまでの一連の動作をいいます。食物を噛む力が衰えてくると、硬いものや繊維の多い食物が食べにくくなり、食べられる食品のバリエーションの減少につながります。
その他の症状としては舌の力が弱まり、動きもぎこちなくなり、その結果、食べ物を飲み込むのに時間がかかったり、むせたり喉につっかえたりします。また、唇や頬の力や動きが衰えると唾液を口の外に垂らしたり、食べこぼしが増えたり、歯の位置の外側に食べ物がたまったりします。
このような症状によって食事が制限されるようになると日々の楽しみが失われるだけでなく、食欲がなくなったり、外食に行く意欲が失われ、友人や家族との旅行や長時間の外出を控えるようになったりする方もいらっしゃいます。これらは高齢者のQOLを低下させるだけでなく、喪失感を与え気分を低下させることとなります。
オーラルフレイルに対しては、食品の選択や食形態の調整を行うことが一般に行われています。オーラルフレイルの症状は少しずつ進行していくために、気付きにくく問題として意識されにくいため、毎日使っている口腔機能は低下しないだろうと考えてしまいがちです。しかし、衰えてきたお口の機能を放置しておくと、さらにオーラルフレイルを進行させる可能性があります。そのため口腔機能を定期的に評価し、機能低下を予防するために、舌・唇・のどの運動や、食品を適切に選択することが重要です。
当科は、歯科医師、歯科衛生士、言語聴覚士の3業種で連携し、口腔機能回復を専門的に実施しております。食べこぼし、食事中のむせ、口の周りの運動などにお困りの方やご家族様は一度当科にご相談ください。
羽根 瞳