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おくちでたべるドットコム

昭和大学歯科病院 口腔機能リハビリテーション科

local_library第35回 昭和大学病院頭頸部腫瘍センターでの取り組み

はじめに

当科では、昭和大学病院頭頸部腫瘍センターの一員として頭頸部腫瘍を患っている患者さんに対し診療を行っています。対象疾患は頭頸部癌口腔癌甲状腺癌耳下腺腫瘍顎下腺腫瘍頸部神経鞘腫など頭頸部腫瘍全般を対象としています。頭頸部腫瘍は治療前、治療後ともに高い確率で嚥下障害や口腔内の様々な変化による摂食障害を生じます。頭頸部腫瘍センターの特徴は、耳鼻咽喉科、頭頸部外科専門の医師、口腔外科専門の歯科医師、再建外科専門の医師、口腔機能リハビリテーション科専門の歯科医師、歯科衛生士、言語聴覚士などがワンチームとなって予防、診断、治療およびリハビリテーションまでを行っていることです。口腔機能リハビリテーション科の歯科医師は治療後のQOL向上を重視しながら周術期口腔管理、摂食嚥下訓練および言語訓練等を実施しています。

外来診療室の様子
外来診療室の様子
(頭頸部外科と診療室が隣接しているため、スピーディでスムーズな情報共有が可能)



頭頸部腫瘍センター(口腔機能リハビリテーション科)の外来診療体制

AM××
PM×××


口腔リハビリテーション診療内容

全身麻酔手術を行う際、呼吸管理を目的に気道へ管を入れます。口腔衛生状態が悪いと、管を入れる時に口腔内細菌が肺に運ばれ、感染し誤嚥性肺炎となる可能性や、術後に免疫が落ちて口腔内細菌が血液に感染すると敗血症を、さらには血流に乗って感染性心内膜炎を引き起こす可能性があります。これらの病気に罹患すると入院期間が延長し、場合によっては命に関わることがあります。口腔衛生状態をよく保つためにはセルフケアだけでは難しく、専門科による口腔ケアも行います。また、頭頸部腫瘍に対して放射線治療、化学療法を行うことにより、強い痛みを伴う口腔粘膜炎、口腔乾燥、味覚障害など様々な症状がでることがあります。これらの口腔内トラブルを防ぐために、周術期口腔機能管理(治療前・中・後の専門科による口腔ケアや歯を保護するマウスピースの作製など)を行います。

往診での口腔ケアの様子
歯科医師と歯科衛生士による往診での口腔ケアの様子


また、手術によって口腔内の組織欠損が予想される患者に対して、術前から欠損範囲を想定し、マウスピースを作製します。マウスピースを用いることで創部の保護、創部瘢痕拘縮の予防および術後早期から経口摂取を目指します。術後創部安定後は昭和大学歯科病院と連携し、顎補綴(1)(2)の作製を行います。

顎補綴の作製例


さらに、治療前から詳細な口腔咽頭機能、発声・構音機能の評価を行い、この評価結果を治療後の到達目標として患者さん一人一人に適した機能訓練を行います。また、頭頸部腫瘍患者では治療後に重篤な摂食嚥下障害に陥り、術後の入院が長引いたり、十分なカロリーを摂取できなくなることがあります。当センターでは、経口摂取開始前に多職種立ち合いの下で嚥下造影検査を行い、経口摂取可否の判断、適切な食形態の選択、代償姿勢(術後の患者さんが食べ物を安全に効率よく飲む姿勢)の指導等を行います。これにより患者さんごとにきめ細やかなリハビリテーションを行うことができ、早期の機能回復を目指します。退院後は必要に応じて昭和大学歯科病院口腔機能リハビリテーション科にて治療を継続する場合もあります。

嚥下造影検査の様子
多職種で行っている嚥下造影検査の様子

玉井 伴樹
中道 由香