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昭和大学歯科病院 口腔機能リハビリテーション科
パーキンソン病とは動作緩慢、手足のふるえ(振戦)、筋肉のこわばり(固縮)からなる症候群です。
パーキンソン病では、本来は生命維持や本能的動作に関わる無意識的な運動を司る「錐体外路(すいたいがいろ)」の働きが損なわれます。日本における有病率は10万人当たり100~150人といわれていて、欧米では10万人当たり150~200人といわれています。30歳代~80歳代まで幅広く発症しますが、その多くが中年以降に発症する病気で、ほとんどが初老期(50歳代後半)に発症し一部が若年発症(40歳以前)で、一般的には(若年性の一部以外)遺伝しない病気です。
パーキンソン病には様々な症状がみられますが、嚥下障害はパーキンソン病患者の約50%にみられると考えられています。
パーキンソン病患者にみられる嚥下障害の特徴は、既に現れている運動障害、疾患の進行度、更には薬物療法の影響を受ける場合があることです。一般には不随意運動による食塊のコントロールの不良や、嚥下力の低下または弱まりによる誤嚥や残留などの障害が起こります。
パーキンソン病患者さんのVF画像
動画食塊を後方になかなか送り込めずに
舌の前後運動を繰り返すのが特徴です。
通常、食べ物を口に入れた時に食塊は舌によって後方に送り込まれますが、舌の筋肉(舌筋)に異常緊張(固縮)がみられる場合、奥舌の舌背が高いままなので、食塊が舌を越えられずに前方に戻って来てしまいます。また、異常緊張の程度によっては、舌で食塊を持ち上げたままそこで動きが停止し舌が下がらない場合もあります。その結果、食塊が後方に送り込まれるまで舌の前後運動を繰り返すのが特徴的です。その他にも舌、咽頭部、口唇の運動障害や口腔内の食塊の残留がみられる場合があります。そして、嚥下時に使う筋肉の機能も低下するため嚥下後にも食塊が喉頭蓋谷や梨状陥凹に残留してしまう(つまり食道に入らず喉頭に貯留してしまう)場合もみられるのです。
パーキンソン病患者にみられる摂食嚥下障害に対する対応としては、あらゆる嚥下障害の対応と同様にその原因を考える必要があります。パーキンソン病に対する治療方法としては不足したドパミンを補うための薬物療法が基本となります。その薬物療法がパーキンソン病患者の嚥下機能の改善に有効で薬物治療が始まったり薬が変わったりすると摂食嚥下障害も改善するという報告もあります。そして、薬剤は決まった時間に服用して効果を発揮することが多いので薬剤の効果が最大限に発揮される時間帯に食事の時間を合わせることも重要です。
また、舌、口唇、喉頭の積極的な運動訓練が効果的な場合も多いですが、いずれの場合も長期的な予後の観察が必要とされます。
また下方を視る事が困難となるので、食物は目線よりも上に置いて視界に入るようにします。
その他にも食事の時の姿勢を調節することで嚥下機能を助ける方法もありますが、著しい固縮がある等の理由で姿勢を変えることが難しい場合は、ゼリー状のトロミをつけるなどの食事内容の変更を行なうのが良いでしょう。また、経口摂取ができない場合は、経管栄養食などを利用して、経鼻栄養(鼻からチューブを入れる)や胃瘻(腹壁から直接胃の中にチューブを入れる)を用いた栄養補給を行います。
口腔機能リハビリテーション科では、パーキンソン病患者さんの嚥下障害に対する最善の対応法を提案致します。ご相談ください。