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昭和大学歯科病院 口腔機能リハビリテーション科
当科の記事が読売新聞に載りました。YOMIURI ONLINEから転載してご紹介致します。
顎義歯を手にするHIさん。
おかげで普通に食べられるようになった
(東京都大田区の昭和大学歯科病院で)
「見た目からは分かりませんが、CT画像を見ると、顔の右半分はほとんど何も写らないんですよ」
そう話すのは、東京都港区のHIさん。口から取り外した大きな義歯は、右上の歯と歯ぐきの部分に加えて、上あご部分も作られている。
「顎(がく)義歯(ぎし)」と呼ばれるものだ。
HIさんは2009年6月、がん研有明病院(東京都江東区)の頭頸(とうけい)科で口腔がんの手術を受けた。きっかけは、奥歯がぐらつくような違和感だった。近所の歯科医院を受診すると、大学病院での検査を勧められた。結果は、進行がん。右上奥の歯肉のがんが、鼻から耳や目の近くに及んでいた。
「口にがんができるなんて、想像もしなかった」
手術では、患部を大きく切除した。空洞になった部分には、腹部の皮膚や脂肪を、はがき2枚分ほどの大きさにはがして移植した。しかし、上あごが欠けたままでは、飲食や発音に支障が出る。院内の歯科で応急の義歯を作ってもらった後、がん研有明病院頭頸科と連携している昭和大歯科病院口腔リハビリテーション科(東京都大田区)を紹介された。同科は、歯科医と言語聴覚士が協力して、食べる機能や言葉のリハビリを行う診療科。顎義歯は新しい技術ではないが、同科では発音やのみ込みの機能を細かく評価し、顎義歯の調整に生かしている。こうした診療科は国内では数少ない。また、同科には、口腔がんに詳しい口腔外科専門医が常勤し、がん再発の早期発見にも努めている。
HIさんは同科で顎義歯を作ってもらい、同時に開口訓練や口のマッサージなど、自宅で行うリハビリの指導も受けた。現在は普通に食べられるし、幸い、がんの再発もない。ただ、リハビリを休むと、すぐ口が開きづらくなる。定期的な通院は欠かせない。
「手術後に、専門家同士で連携して対応してもらえたので、すごく安心できました」と喜ぶ。
患者の中には、口腔がんの手術後、あごが完全にずれてしまう人もいる。せっかく顎義歯を作っても、上下の歯がかみ合わないと食事ができない。そこで同科では、患者に合わせた特殊なマウスピースを使って、あごのずれを修正する独自の治療も行っている。同科教授の高橋浩二さんは「顎義歯は、作れば終わりではない。医療者による定期的な調整と、患者さん自身が行うリハビリの両方がそろってこそ、有効に機能する」と話す。
2011年8月24日 読売新聞