ホームコラム第13回 大人の発音障害「口蓋化構音」
local_library第13回 大人の発音障害「口蓋化構音」
今回も、大人の方が悩んでおられる発音障害、口蓋化構音(こうがいかこうおん)についてご説明します。前回お話した「側音化構音」よりは少ないのですが、実際に悩んでおられる方がいらっしゃいます。構音訓練を受けることで改善しますので、コラムを読みながらもしかしたら・・・という場合は、是非ご連絡いただきたいと思います。
- 当科に受診されるきっかけは?
「転勤になったら、職場の上司の名前にた行やな行が含まれていたため、発音を治そうと本気で考えるようになった。」
「電話の相手に名前を正しく伝えられないことがつらかった。」
「接客業に就職したいのだが、相手に話が通じないと困るのでどうしても発音を治したい。」
「学校で、友達から自分の発音を真似され、からかわれた。」
「学生時代は、友人から発音を指摘されることは一切なかったが、仕事上でクライアントから変な顔をされるのが気になった。」
- どのような発音障害なのか?
【言いにくい音】
た行、だ行、な行、ら行、さ行、つ、ざ行、(しゃ行、ちゃ行、じゃ行)
音声学では、歯茎音と呼ばれる音のグループに属する音です。
【誤り方】
た行の音が、か行とた行の中間の音(どちらかというと、か行の音に近い)に聞こえます。
さ行の音が、口の奥でこもったようなさ行の音に聞こえます。
な行やら行の音は、が行の音に近く聞こえます。
話している内容は通じるのですが、会話全体が「口の中でもごもごしゃべっているような感じ」とか、「飴玉をなめながらしゃべっている感じ」という印象が共通して見られます。
【発音しているときの舌の動き】
た行やさ行は、舌の先を上あごの前歯のつけねの部分(歯茎部)につけて発音します。ら行も舌の先で上あごを後ろから前に弾くように動かすことで「ら」の音を出しています。舌の先を使わずに、舌の中央部(舌背)と上あごの中央部とで発音してしまうのが、口蓋化構音です。鏡を見ながら「たたたた・・・」、「らららら・・・・」と速く発音すると、舌が奥に引っ込み、舌の先ではなくて舌の中央部が盛り上がった状態で上あごにくっつけている場合が口蓋化構音です。このように口蓋化構音かどうかを見極めるのは、耳で音を聞くと同時に、舌の動きもチェックすることが大切です。
- 治療法は?
口蓋化構音も側音化構音と同様で、いわゆる「赤ちゃん言葉」とは異なり、年齢が高くなっても自然に治ることが少ないといわれています。発音しているときの舌の使い方が正常な方とは異なっているので、発音の専門家(言語聴覚士、小学校のきこえ・ことばの教室の先生など)による専門的な評価と指導が必要になります。 病院で治療する場合は、1回の訓練が40分から60分の個人訓練になります。発音の訓練の前に、舌の先のコントロール訓練、舌の中央部をへこませ舌を平らに保つ訓練、舌打ちの訓練(ポッピング)など、舌の機能を高める訓練を十分に行うことが大切です。
耳で聞いただけでは誤った発音と正しい発音の違いがわかりにくいので、「舌の奥を上あごにつけないで、舌の先で発音する」のように具体的に舌の形を練習すると音も改善してゆきます。側音化構音と同様に、地道な訓練が必要となります。
- まとめ
口蓋化構音も、舌の使い方が正常な発音と異なるために生じる発音の誤りです。自分で治すことは難しく、専門家による訓練が必要となります。お子さんの場合は、療育施設、病院、ことばの教室など訓練が受けられる施設が多いのですが、大人の方の場合は、訓練が受けられる施設が少ないのが現状です。何か気になることがあれば、ご連絡ください。ご相談に応じたいと思います。
言語聴覚士 山下夕香里
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