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おくちでたべるドットコム

昭和大学歯科病院 口腔機能リハビリテーション科

local_offer2010年5月12日昭和大学摂食嚥下研究会特別セミナーの報告

What Do WE Know about Treatment for Oropharyngeal Dysphagia?

講師のMichael E. Groher先生は、カリフォルニア州にあるUniversity of Redlandsの教授であり、米国の嚥下障害学会誌であるDysphagiaのAssociate Editorをつとめ、American Speech Language Hearing Association(米国言語聴覚士協会)の名誉会員、日本摂食・嚥下リハビリテーション学会の名誉会員であり、摂食・嚥下リハビリテーションの臨床、研究、教育に多大な功績を残されています。日本での講演もこれまで数多くされており、著書も何冊も日本語に翻訳されております。

Groher先生は最近の著書 “Dysphagia: Clinical Management in Adults and Childern” の中で、日本では歯科医師が摂食・嚥下治療のチームリーダーであることが多い、と述べられています。日本摂食嚥下リハビリテーション学会会員における歯科医師が占める割合が高く、また口腔リハビリテーション科髙橋教授とGroher先生は20年以上親交が厚く、Groher先生も来日の度に昭和大学歯科病院に来られるので、このように日本を紹介されたのだと思います。

Groher先生には今回「口腔・咽頭期の嚥下障害の治療についてわれわれが知っていることは何か?」と題して、口腔期・咽頭期の嚥下障害の治療について基礎から最新の情報まで豊富に盛り込まれた内容でご講演いただきました。

摂食・嚥下障害に対しての治療法としては、内科的治療、外科的治療、感覚療法、リハビリテーションなどがありますが、今回の講演では特にリハビリテーションが中心に取り上げられました。講演前半では、現在一般的に広く行われている、運動訓練(舌の抵抗訓練、Showa exercise、Masako手技、頭部挙上訓練、リーシルバーマン音声治療、Pharyngocise、咽頭深部への圧刺激)、姿勢調節法(側臥位、頸部伸展、頚部屈曲、頚部回旋)、嚥下法(昭大式嚥下法、メンデルソン手技、強い息こらえ嚥下法、努力嚥下)について紹介していただきました。それぞれの訓練法に関して、どのような症例に有効か、どのような手順で行うか、また、どのような効果が得られるかをEBMに基づいてわかりやすく整理してお話しいただきました。講演後半では、表面筋電図によるバイオフィードバックを用いた嚥下訓練や、最近摂食・嚥下リハビリテーションの分野で注目を浴びている電気刺激療法について、非常に興味深い研究成果を紹介していただきました。

今回の講演には、本学の教職員、臨床研修医、学生だけでなく、学外からも多くの方に参加していただき、60名以上の多数の参加者がありました。参加者は、歯科医師、医師、言語聴覚士、学生など様々な職種におよんでおり、摂食・嚥下障害のリハビリテーションには多職種連携が欠かせないことを再認識させられる有意義な講演会となりました。講演終了後にも活発なディスカッションが行われ、大盛況のうちに幕を閉じました。

参考文献:
1)Groher M and Crary M. Dysphagia Management in Adults and Children. St Louis, MO: Elsevier/Mosby, 2010.
2)Crary M and Groher M(著).藤島一郎(訳). 嚥下障害入門. 東京: 医歯薬出版, 2007.
3)Crary M and Groher M. The Introduction to Adult Swallowing Disorders. Woburn, MA: Butterworth-Heinemann, 2003.